「はづ別館」の加藤社長様に講演をして戴きました。
「はづ別館」は、わずか14室の小さな旅館ですが、日本旅館大賞を2回も
受賞した知る人ぞ知る有名旅館です。
”価値観の宿”として、宿泊したお客様が、チェックアウト時に妥当と思う金額を
払うというユニークなシステムをとっています。
「はづ別館
」と言っても、本館は無く、最初は1旅館だけでしたが、今では
湯谷温泉に、それぞれ個性的な「湯の風HAZU」「はず木」「ハズ合掌」を
経営し、他に西浦温泉と渥美半島にリゾートホテルも有ります。
私は、以前から静かな落ち着いた「はづ別館」さんの雰囲気が好きで、
日帰り入浴も含め数回訪れておりましたので、加藤社長のお話は
とても楽しみにしておりました。
会議室に入って来られた加藤社長の姿は、普通と違っていました。
作務衣に羽織と、旅館のご主人というよりお寺の和尚さんといった風でした。
加藤社長は2代目として「はず別館」を継いだ後、2~3年は楽だったそうですが、
バブルが弾け、お客様が少なくなった頃、「一体お客様は、何を求めて来訪される
のだろう。どのように評価されているのだろうか。」と疑問に思ったそうです。
そこで加藤社長は、普通の人では思いもつかないとんでもないことを考えつきました。
「お客様に、宿泊料をきめてもらおう。」勿論、身内も周りも大反対です。
「そんな事をしたら、たちまち潰れてしまう。」当然の心配です。
でも、加藤社長には確信があったのです。
「精一杯心を込めておもてなしもすれば、お客様は必ずわかって下さるはず・・。」
性善説にたった考え方でした。
また、宿の使命は何かと追求し、何も無い山間の温泉で
”退屈する事がいかに贅沢か”と思い至り、”気分を売る”事にしたのです。
はづ別館HPより転載。
簡単なアンケートと共にお客様が記入された宿泊料金のこれまでの最低は百円、
最高は六万円だそうです。精一杯のおもてなしに少ない金額を書かれた方が、
帰宅して「儲かったぞ。」と吹聴するより、「悪い事しちゃったな。お前は絶対
ちゃんと払うんだぞ。」と、言って下さると信じているのです。これまで無事経営
して来れた事が、加藤社長の考えの正しかった事の何よりの証明です。
このユニークな取り組みが評判になり、新聞・雑誌・TV等の取材が殺到した
お蔭で、旅行社に営業に行かなくても、お客様が来て下さるようになったのです。
また、後継者がいなかったり、経営が立ち行かなくなった旅館の再建を依頼される
ようもになりました。
はず木HPより転載
常に時代における使命は何かと考え、平成六年には、豪華な食事に飽きている
お客様に向けて、より健康な食事を提供する、”薬膳料理”を特色とした、「はず木」
を開業し、平成八年には、癒しとゆとりを求めるお客様に向けて、エステを併設し、
チェックイン・チェックアウト共12時という24時間ステイを実現した「湯の風HAZU」を
開業したのです。薬膳もエステも24時間ステイもだれもやっていない頃で、
まさに時代の先駆けでした。
湯の風HAZU HPより転載。
今は年間80回位の取材や講演依頼、旅館の立て直しの相談があるそうです。
再建に取り組む時は、以前の従業員をそのまま引き受けるそうで、サービスの質や
人材育成が気になるところです。
「60~70歳位の高齢者も多いので、元気になってもらうよう励まします。」
とのことです。経営者が暖かい心で接すれば、従業員も暖かい心で
お客様をおもてなしすると信じていらっしゃると感じました。
最後に、サービス業としての心構えをお話戴きました。
「当たり前のことを、当たり前にできている。」のがスタート。
挨拶一つでも、できていない事も多いものです。
大切な事は、もてなし=ホスピタリティ=親切。です。
使命感。 奉仕の心。 忠誠心。 誠実な心。
謙虚な心。 思いやり。 感謝の心。 愛。
「八つの事を心掛け、当たり前のことを当たり前にすれば、商売は成り立つ。」
との事でした。
日之出や、ダストクリーンや私達レンタルモップ・レンタルマット業界にも
大変参考になる素晴らしいご講演をありがとうございました。
また、事前の問い合わせを覚えていて下さり、関屋酒造の銘酒「空」まで
頂戴致しまして、心よりお礼申し上げます。