会長は八十を超え耳が少し遠くなられましたが元気で毎日出社されています。
今から14年半前のある日、当時は社長だったAさんから電話がかかってきました。
「奥さん、ご主人が亡くなられてさぞお困りでしょう。ご支援します。お値下げもしましょう。」専業主婦から社長になって、銀行の厳しい貸し剥がしにあっていたころですので、まさに地獄で仏、A社長の言葉が神のように響いたことを思い出します。
仕入れ先への挨拶巡りで、初めてお会いしたA社長は小柄ながら眼光鋭く、さすが一代で紡績会社を築かれた気迫に満ちていました。あの時も夕食をご一緒にとのお誘いをお断りしてしまい、残念がられていましたね。
その後、一度は日之出に来てくださり、私も何回かご訪問して、繊維のことを教えていただきました。特に高級なジーンズの糸を得意として、いかに不揃いなネップを出すのが難しいかというような、アパレルの考え方に感心しました。
世の中に出回っているレンタルモップのモップの原糸はたいていA社の綿糸が使われているののですが、A社の売り上げの5%にしかすぎないと聞いてびっくりです。モップがいかにニッチな業界だということがわかります。
三年前、社長をバトンタッチしたお孫さんとにこやかに出迎えて下さった会長さんに、やっと昨年銀座三越で購入した本田蒼風さんの書入りの前掛けをお渡しすることができました。
高品質で有名なA社の太番手の糸を豊橋の芳賀織布工場で織り上げて、藍色に染められた前掛けに、アート書家の本田蒼風さんに私が選んだ文字を書いていただきました。A会長のお顔を思い浮かべながら、「一生青春」これしかないとと思いました。
箱からだした前掛けがA社の糸で織られていると聞いてびっくりされました。
「一生青春」をA会長のために書いてもらったと聞き、また驚かれます。
「はつらつとしてあなたの方がぴったりじゃないの。」なんて言いいながらも前掛けを締めて、社員さんに見せに行かれました。喜んでいただいて良かった。これでご恩返しができたわけではないのですが、気持ちだけでもお伝えできて良かったです。
夕食を一緒にというお誘いをまたお断りして、近くの大阪産業創造館で開催されるセミナーに向かいます。
去年もお断りしてごめんなさい。数年前お昼に美々卯本店でご馳走になりましてありがとうございました。あれから大阪に来るたび美々卯さんのおうどんをいただくのが楽しみになりました。
またお会いできる日を楽しみにモップづくりにに励んでまいります。
ゆりこ